Action

学んだことをまとめ、看護について考えていきます。

Practice Makes Perfect.

医療論文のabstractの読み方

 

英語の医療論文を読むようにあたって、要約:abstractの内容を素早く的確に理解するやり方があります。

 特に臨床で働いていて、チームで簡潔に共有する時は便利だと思います。

 

 

全文を精読をすることももちろん欠かせませんが、abstractから素早く概要を把握することを目的とするならばとても有効だと思います。

また、内容理解だけでなく論文の内容を簡潔にpresentationする時にも応用できます。

 

 

ただ、そう言っている私も社会人になってからメンターに教わり、学生の頃は聞いたこともありませんでした。

確かに、専門の方が記載しているサイトはありますが、具体的なやり方を説明しているものは多くありませんでした。

また、多くの方が愛読されているいくつかの論文関係の書籍には内容が書かれているものの、多くの看護大学・医療施設等では学んでおらず、周知されていないようです。

 

そこで、教わったその手順を明確にまとめるとともに、私自身取り組んでみて感じた点も含めてご紹介したいと思います。

 

 

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PICO framework

このframeworkは、世界共通の医療論文の概要を知る際のツールになります。

P; Population or Patient Problem,

 I; Intervention,

C; Comparison,

O; Outcome,

の4つのpartの頭文字からなります。

文献や場合によっては、PECO(この場合はIがE; Exposureに置き換わっている)やPICOC, PIEなどと形態が変わることもありますが、ポイントを抑える本質は変わりません。

 

 

参考までにPubMed Healthでは以下のように紹介されています。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

さらに要点をまとめるため、その4個をさらにそれぞれ2つにして合計8個のポイントに分けます。

 

P; Population or Patient Problem, 

➀研究の対象となった患者(どんな患者が対象?) 

②研究の対象者人数(合計何人参加?)

I; Intervention,

③介入方法(どんな介入?) 

④介入群の人数(合計何人でどのように選ばれた?)

C; Comparison,

⑤対照方法(どんな治療を実施?) 

⑥対照群の人数(合計何人?)

O; Outcome,

⑦評価指標(アウトカムは?) 

⑧結果(アウトカムの実際は?)

 

これら8つのポイントを押さえていきます。

 

 

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私も最初は上手く理解できなかったのですが、実際に使用してみるのが一番の近道になりました。

 

昨年話題になった日本発の論文を例に挙げてみます。

私もこの論文を紹介されて読んだ時はとても感動しました。(いつかこのような研究ができるようになりたいな。頑張ろう!)

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 PICO frameworkは論文の要約部分を見るものです。

そのため見ていただきたい箇所は、要約:abstractところになります。

(Perpuse:研究目的、Mterials and Methods:研究デザインや方法、Results:結果、Conclutions:結論がこれらにあたります)

(上記のURLのページでは本文は見れませんが、Science Directにsign inしたら見れます。是非本文もご覧ください)

 

 

 

この論文は、“ICUで働くCNSやCNは人工呼吸器の患者の死亡率に影響を与えているのか”との内容が書かれています。

 

 

さて、まずP; Population or Patient Problem,ですが、研究の対象となった患者(どんな患者が対象?) 研究の対象者人数(合計何人参加?)を確認します。

 

Mterials and Methodsの一行目に、

Using a Japanese national in-patient database, we identified 45,620 patients who were admitted to an intensive care unit (ICU) and received mechanical ventilation within 2 days of hospital admission between 1 April 2014 and 31 March 2015. 

 

とあり、研究の対象となった患者は、日本のICUで2日間以内に人工呼吸器を使用した患者で、研究の対象者人数は45620人と書かれています。

 

 

次にI; Intervention,では、介入方法(どんな介入?) 介入群の人数(合計何人でどのように選ばれた?)を見ます。

 

Resultに、We examined 8955 patients in 134 hospitals without CN/CNSs and 36,665 in 284 hospitals with CN/CNSs

 

とあり介入方法は、CNとCNSがいる284施設で、介入群の人数は36665人の患者です。また論文の題名にあるように、A retorospective cohort studyで後ろ向きのコホート研究になります。

 

 

さらに、C; Comparison対照方法(どんな治療を実施?) 対照群の人数(合計何人?)では、上記と同箇所に記載されています。

対照方法は、134のCNとCNSがいない施設で、対照群の人数は、患者8955人となります。

 

 

最後に、O; Outcome 評価指標(アウトカムは?) 結果(アウトカムの実際は?)です。

 

Perposeの最後の箇所の、with 30-day mortality for mechanically ventilated critically ill patients.

 

がどうなっているのか評価したので、評価指標は、人工呼吸器患者の30日間死亡率を指し、結果は、ResultsとConclutionsの通り、介入群であるCNとCNSがいるIUCは有意に30日間死亡率の減少に関係していた、ことが分かります。

 

 

表にするとすっきりします。

 

P; population どんな疾患が対象? 日本のICUで2日間以内に人工呼吸器を使用した患者
  合計何人が参加? 45,620人
I; intervention どのような介入? CNとCNSがいる284施設
  介入群は何人? 36,665人
C; comparison 対照群の治療は? CNとCNSがいない134施設
  対照群は何人? 8955人
O; outcome アウトカムは? 人工呼吸器患者の30日間死亡率
  アウトカムの実際は? 介入群であるCNとCNSがいるIUCは有意に30日間死亡率の減少に関係していた

 

 

 

私も指導を受けてみて感じたコツは、数字の箇所を読むことです。数字の前後には重要な文章があると思います。

また、やはり確実な英語論文が分かるようになる方法は、分からない単語や文法は調べて丁寧に文章を読むに尽きます。出てくる単語も話し言葉とは違い(日本語でも同じですが)難解な印象を私も持ちましたし、専門用語は調べるしかありません。

ですが、数件の論文を読んだ後は、同じ単語や規則が見えたり文脈から言葉の意味が分かるようになったり、楽に感じてくるはずです。

 

 

 

 

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もし、簡潔に他者に論文の内容を伝えるときは、PICOの8か所を文章化するだけです。

 

この場合では、

 この研究は、ICUで働くCNSやCNと人工呼吸器の患者の死亡率を調べた後ろ向きのコホート研究です。

(P):研究の対象は、日本のICUで2日間以内に人工呼吸器を使用した患者で、研究の対象者人数は45620人でした。

介入は、(I):CNとCNSがいる284施設で調査し、介入群の人数は36,665人の患者でした。

対照群は、(C):134のCNとCNSがいない施設で、その人数は、患者8955人でした。

アウトカムは、(O):人工呼吸器患者の30日間死亡率を定め、結果は介入群であるCNとCNSがいるIUCは有意に30日間死亡率の減少に関係していたことが分かりました。

 

と述べることができます。

シンプルですがまさにその体の通り要点を簡潔に述べているpresentationになります。

 

 

 

 

 

このframeworkが全てきっちり当てはまる訳でもありません。ただ、要約部分理解の1つの方法として有効ではないかと思います。

英語が苦手だった私でもやれば次第に英語論文が読めるようになりました。

本当に良い英語論文は、とても完成された文体であり、designそのものが論理的で知的で美しいと気づくことができます。

 一番論文の理解の助けになるのは、何より数を読むことです。

 

 

最近論文を読んで考えるのを怠っていたなあと反省。。。。再起します。